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スーの船出 その3

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   前回、日本で応援してくださっている方々への報告を書いてから、はや一か月。少しずつこちらでの生活にも慣れてきました。最初の頃は、毎日をこなすことで精一杯でしたが、最近は少しずつ周りを見る余裕も出てきた気がします。 というのも、この一か月もなかなか順調とはいかず、何度も自転車をパンクさせたり、慣れないニュージーランドの道に迷ったりと、ちょっとしたトラブルの連続でした。日本にいたときには考えなくてもよかったことに毎回引っかかって、そのたびに「ここは日本じゃないんだな」と実感させられていました。でも最近は、そういう状況にも少しずつ対応できるようになってきて、道の途中でふと目に入ったおいしそうなベトナム料理屋さんに気づけるくらいには、気持ちにも余裕が出てきました。  学校でも変化がありました。最初は英語が思うように出てこなくて、会話に入ること自体にハードルを感じていましたが、今は少しずつ話せる人が増えてきて、気づけば一緒に過ごす友達もできました。たとえ短い会話でも、それが自然に続いたときは「ちゃんと伝わってる」と実感できて、それだけで少し自信になります。最近では、友達に「英語うまくなったねぇ~」と言ってもらえることもあって、それが小さなモチベーションになっています。  そしてカヌーの方でも、大きな大会がありました。ニュージーランドで一番大きな大会の一つで、結果は3位。決して悪い結果ではないのかもしれませんが、三日目の初戦で負けてしまった悔しさは今でも残っています。あの一戦を勝てていれば、もっと違う結果が見えていたかもしれないと思うと、簡単には切り替えきれませんでした。 それでも、その後の試合ではなんとか気持ちを立て直して、自分のプレーに集中することができました。今回は先輩と一緒に出る大会でもあり、普段とは違う緊張感の中でプレーする経験ができたのも大きかったと思います。技術だけでなく、試合中の空気や流れの感じ方など、学ぶことの多い大会でした。  これからは少しのオフを挟んで、ウィンターリーグが始まります。ここからまた新しい環境とレベルの中で、自分がどこまでできるのか試されていくと思います。 まだ課題はたくさんあります。英語も、生活も、カヌーも、どれも完璧とは言えません。でも、この一か月を振り返ると、確実に最初の頃よりは前に進んでいる実感があります。 小さなことでも...

まーちゃん、卒業。

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奈良田一同で(ま)を囲んで  うちの「まーちゃん」こと(ま)がつい先日、小学校を卒業しました。全校6人唯一の卒業生、奈良田の人たちも駆けつけ、三重県で寮生活をしている姉の(う)もこのために帰省。集合写真のときにはニュージーランドで修行中の(す)ともオンラインで繋げ、みんなで明るく元気に祝った卒業式でした。 朝、(ま)のネクタイを結び直してあげる(う)  驚いたのは、冒頭の校長先生挨拶の時から、すでに校長先生が泣き始めたこと。おかげで会場の多くの人の涙腺が始めから緩みっぱなしでした。4年、5年生の頃に、先生との向き合い方でなかなか大変な時期もあった(ま)だったので、辛抱強く向き合って考えることの意味や楽しさを教えてくれた最終学年の先生方には大変感謝しています。その感謝の気持ちを「お礼の言葉」のスピーチに先生を名指しで目一杯盛り込んだので、その先生も立ち上がって大号泣でした。その姿が県内の夕方のニュース番組で3つのチャンネルで流れ、それを見た知人友人からも次々とお祝いと「泣けました!」の連絡が来たほどです。 5年前の(ま)入学式の写真  写真を見てもわかる通り、まーちゃんはいつまでもまーちゃんです。相変わらずの笑顔。良いところもそのままです。それでも式で見せた凛とした立ち振る舞い堂々とした歌声、心のこもったお礼の言葉などを目の当たりにして、もうしっかり自分の世界を作り始めているのね、としみじみしました。「うちのまーちゃん」なんて言ってられるのもあと少しかもしれません。 担任の先生と熱唱  心も体も急速に成長中。まだまだパワーを秘めている。これがいつどのように炸裂するか伸びやかに発揮できるか、その方向探しがこれから始まるのでしょう。多くの人に暖かく見守られながら、今のまま、のびのび、すくすく、ごろごろ、ニヤニヤ、進め、まーちゃん! 夜は「おすくに」で和やかに謝恩会 (わ)

バイバイ、制服。2026年度を振り返る

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目に見えるのではないかと思えるほど、大胆に季節がめぐるこの春、私のきょうだい達はそれぞれの節目を迎えています。弟はカヌー修行のためニュージーランドへ旅立ち、妹の(ま)は中学生に。それにともなって、1番下の妹は初めて身内のいない小学校生活がはじまります。  2年前から私は実家を離れ、学校寮生活を送っています。帰省するたびに、きょうだいは私の知るおもかげも残しながらも、心も体もなんだかパワーアップしていてびっくりします。彼らはたしかに、大きくなっている最中なんだなと感じます。そして、あっという間のこの時間が、彼らを形づくるかけがえのない要素になっていくはずです。  私にも同じだけのかけがえのない時間が流れている。将来の土台として振り返ることのできる「今」を過ごせていたらいいな、と思います。そうであるように、この1年を振り返ってみることにしました。  今年度の1番のチャレンジは、夏休みと春休みのひとり暮らしです。普段は寮生活を送っていますが、長期休暇中は寮が閉まるため、1年生の時は帰省していました。  高専でも、小3から続けている陸上競技に打ち込みたいと思っていました。そのため、帰省中は部活動に参加できない分を自主練習で補っていました。でも、夏には三重県内で大会が行われ、そのたびに山梨県から向かうのは体力的にも金銭的にも負担が大きかったです。また、春にはシーズンインの準備があります。帰省していた一年前は、自宅周辺の山や坂を走って練習していましたが、いざ試合が始まると、全く調子が上がらず、低迷していました。きっと、自分の身体の調子や、目標とする記録に向けてどんな段階を踏めば良いのかなどの認識が不十分で、きちんとした指導を受けられなかったことが影響していたと思います。苦しい夏だったけれど、これも今後につながる経験だったと思います。  長期休暇中も三重県内に滞在し、保健体育科教授である顧問のF先生に手ほどきを受けながら、部活動や大会に参加したいという思いが強くなりました。それができれば、今後卒業研究のときには、1年を通して研究室への出入りも可能となり、進路の選択肢も広がると思いました。そこで、ゴールデンウィークの2週間を試験的に、その後の夏休みの2ヶ月、そして今、春休みの2ヶ月を、学校近くのアパートで過ごしています。  ...

Trinosとお仕事

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2月、3月と、 Torinos のお仕事に参加して、それぞれの現場で、グランドワークを担当させてもらいました。どちらも八ヶ岳をすぐ近くに感じることのできる現場で、2月中におこなった1件目は剪定(樹高下げや支障枝の伐り戻し)のお仕事、3/5~6におこなった2件目は、敷地内の枯れ木や支障木を間伐的に伐採するお仕事で、森づくりのような感覚でした。 僕は自分でツリークライミングするのも好きですが、ほかの人のクライミングを見るのも好き。特にツリークライミングや石積みでは、インストラクターとして講習会も開くので、やっている人の意図や体にかかっている負荷を想像して、言語化する(できるだけ伝わる言葉に変換する)ことを心がけています。 こうした樹木管理の仕事では、安全で、周りの木や環境への影響を考え、樹上と地上でのコミュニケーションが大事。樹上と地上では文字通り視点がまるで異なります。クライミングする前に打ち合わせたプランよりも良い方法を見出した時には、きちんと、かつクライマーにストレスにならないように伝える必要がありますが、普段から心がけている言語化のトレーニングが役に立ちます。クライマーで、Torinosを主宰するマツさんとはツリークライミング体験会(レクリエーション)でもご一緒することが多く、そちらの方のお付き合いは何年にもなります。木に対する姿勢もお互いに分かり合っているので、樹上と地上のコミュニケーションがスムーズ、かつ和やかで助かります。 おかげさまでどちらも無事に完了。2件目の方はさらにもう一日、ユニック利用で積み込み、搬出の作業も予定されていましたが、そちらは人手も余りそうなので、2日目のうちに搬出場への丸太枝葉の移動までで失敬して、最終日は終盤を迎えているメープルシロップの仕事をさせてもらうことにしました。 Torinosのマツさんとは、樹木管理(ツリーケア)の仕事で今後もご一緒する機会が増えていく予感。今回も大きな失敗と呼べるようなミスはありませんでしたが、あーしておけば良かったかな、こーすればもっと楽にできたかな、いつも課題が頭によぎります。それでこそ次につながるわけですが、これは石積みでも同じで、職人的な仕事には、少しでも〝より良く〟したいという思いが心に残ります。反省しているうちに、2時間以上かかる帰路もあっという間で、気づけば自宅に着いています。 (ゆ)

スーの船出 その2

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ニュージーランドに来てまだ数週間。でも、体感では何か月も過ごしたような濃さがあります。 正直に言えば、出発前は強がっていました。親や仲間の前では「なんとかなる」と笑っていたけれど、本当は怖かった。言葉は通じるのか。カヌーは通用するのか。生活は回るのか。自分はここで必要とされるのか。空港で家族の顔を見たとき、覚悟は決まりました。でも同時に、逃げ道もなくなったとも感じました。 到着してすぐ、その現実を思い知らされました。英語の授業では、頭の中では分かっているのに言葉が出てこない。ホームステイでは、相手の冗談に笑うタイミングすらずれる。スーパーでは値段の感覚も違う。日本で「普通にできていたこと」が、ここでは一つずつ考えないとできない。勉強も同じでした。内容は理解できるのに、英語で答えると精度が落ちる。とてももどかしく、自分の実力が削られているような感覚でした。 そしてカヌー。練習はすでに始まっていて、週末には大会。その試合は、今後の環境にも関わるかもしれないと聞きました。ただの試合ではなく、「選ばれるかどうか」を意識する場。異国で結果を出せるのか。通用しなければ、立場が変わるかもしれない。そう考えると、正直、何度も自信を失いかけました。 大会の前日、なかなか眠れずにイヤホンをつけました。何を聴くか迷って、結局いつも日本で聴いていた米須玄師さんの春雷を流しました。特別な理由があったわけではありません。でも、イントロが始まった瞬間、胸の奥が少し熱くなりました。怖いのは、本気だからだと思いました。ここで結果を出したいと思っているから、失敗が怖いだけなんだと気づきました。音が強くなるにつれて、うまくやろうとしすぎていた自分が少しだけほどけていく感覚がありました。完璧な英語も、完璧なレースもいらない。今出せる力を出すだけでいい。そのシンプルなことを、やっと受け入れられた気がしました。 当日、スタートラインに並んだときも緊張は消えていませんでした。でも前日とは違って、逃げたいとは思いませんでした。速く漕ぐことよりも、自分の漕ぎを出すことに集中しようと決めていました。結果がどうなるかは分かりません。それでも、ここに立っている自分を否定しなくなっていました。 ホームステイ先で自分から会話を振れた日。英語で先生に質問できた日。練習で「Good paddle」と声をかけられた日。どれも小さな...

そろばんと昼寝

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奈良田の春祭り用に必要なスズタケを一緒にとりに行って、自分用にも長いものを一本確保。それをぐるんぐるん全身で振り回し、「空を混ぜて」いるそうです。 そんなことをして、ひとしきりダム湖の辺りで遊び回って家に戻った日曜日のお昼過ぎ。おやつを食べながらテレビをつけた(さ)。何を観るかといえば、アニメのサザエさんでした。 (さ)はサザエさん一家が大好きです。この日、カツオくんがそろばんをしているお話を見て、自分もやってみたくなったようです。 家にあったそろばんを引っ張り出してきたので、私もできないなりに知っていることを教えました。算数では2桁の足し算や引き算をやっている真っ最中。そろばんの仕組みもわかるようなわからないようなで、ワーワー言いながらひとしきりいじっていました。だいぶ頭を使って疲れたのか、やはりワーワー言いながら、そのまま縁側に座布団をひいてひなたぼっこを始めました。 ひとしきり家事を終えて、ふと見てみると、(さ)は、お腹にそろばんを乗せたままグーグーお昼寝。少し視線を庭にずらすと、コトも手足を投げ出して、コの字でお昼寝。なんだこの2匹は!と思いつつ、春の陽気なのだなぁと思った昼下がりでした。 (わ)

Atelier moo のメープルシロップについて

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メープルシロップ製作の季節を迎えています。 我が家では 楓だけでなく胡桃からも 同じようにシロップを作っていて、合わせて50余本の木から樹液を採集させてもらっています。奈良田では立春前後、木ごとにピークは異なりますが、それぞれの木から、おおむね3週間くらいの期間しか採集できない貴重な樹液です。 毎年、いつ、どの木からどのくらいの量の樹液が採集できたか、毎日の天気や気温などとともに記録をつけていて、特に今季に入ってからは、楓と胡桃の性格(植物生理)の違いをはっきり認識できるようになって、「あそこのあの木がよく動いている」と、木ごとのその日々々の予測も立つようになり、何時までに回収したい、回収してきた後のためにどのくらいの薪を用意しておかねば、と段取りも良くなってきました。 樹液を採集させてもらっている木はどれも、地域の自然環境の中で自然に生えたもので、植えて栽培したものではありません。楓も胡桃も、単独の樹種でまとまって生えていることはなく、混交林(2種類以上の高木が混ざり合った雑木林)の中にあります。その中にあるイタヤカエデ、ウリハダカエデ、オニグルミを見つけて樹液をいただきます。 樹液をいただくには、木を傷つけて採り口を作ります。毎年、新たな採り口を作ります。採り口が多ければ、その分採集できる樹液も増えるはずですが、私たちは、樹液をいただく採り口は、木の1本につき1つだけと決めています。 なので50余本の木から樹液を回収するには、相当の広い範囲の山を歩いて、1本々々見て回ります。 回収してきた楓と胡桃の樹液は別々に、なるべく早く煮立たせます。うちではまず、ホンマ製作所の時計型ステンレスストーブで薪を利用して沸騰させます。極端に多い日では回収した樹液が200L近く及ぶこともあり、2月中は外出する用事はほとんど入れることができず、少なくとも僕か(わ)が付きっ切りです。薪の確保はほかの季節でもできますが、かなりの労力を要します。 なるべく長く薪で煮詰めていきたいところですが、順番待ちの貯まった樹液がたくさんあり(いまも、前日に回収してきた100L余のカエデ樹液を火にかけながら文章を書いています)、また連日のように新たな樹液を回収してくるのでストーブだけでは間に合わず、沸騰した樹液は徐々に屋内に移し、火力が強く安定している3重のガスコンロで煮詰めていきます。 メープルシロッ...