故遣薰風特送涼(1)
10月14日からの3泊4日、修学旅行ということで台湾に行った。
学校が始まって2週間。なんだか夏休みが続いているような、海外に行くのがどこか信じられない気持ちで出発日を迎えた。
台北市に向かう飛行機の中で、10歳の時に行ったインド旅のことを考えた。今回の帰国日は10月17日だったが、寮に着いてシャワーを浴びた時にはもう18日になって30分が過ぎていた。この日は17歳の誕生日だった。インドへ行ってからもう7年も経っていた。
生まれてから10年の節目で、出生国インドへ。パスポートやビザを取るのにどれくらい時間がかかったのか分からないけど、初めて自分で書類に住所を書いたり、毎日3行日記を書いて英語を勉強したり、行くまでにかけていた熱量と時間を思い出すと、今回の旅があまりにもあっけなく始まった感じがあった。
桃園空港に到着し、まず向かったのは九份。都会の台北市から高速道路で走っていると、徐々に山が道路の脇に迫ってきた。くねくねした細い林道のような道は赤沢へ向かうルートに似ていた。海抜ほぼ0mの空港から300mほど登っただろうか。急斜面を隙間なく覆う濃い緑の木々。そこに点在する、コンクリート色の四角い小屋のような建物。赤い提灯。幅1mもないような階段。そして面積の狭い青空。茂倉、赤沢、奈良田。ああこれは見たことあるぞ。振り向くと、リアス式海岸のような入りくんだ港が小さく見えた。視野に大きく占める緑の斜面が中心へ向かって集まり、くねくねした小さな港に収束する図は、明浜で見た気がするなと思った。
この日は平日で、夜になるとお客さんが増えるそう。まだ人通りの少ない階段を登って向かったのは「あめおちゃ」というお茶屋さん。お雛様のような小さな色とりどりのお菓子と、お茶を飲んだ。標高の高いところで栽培される台湾のお茶は、渋みが少なく、同じ茶葉で長く楽しめるのが特徴だそう。その通り、飲んだ後に甘い香りが鼻からぬけ、飲み物に対してそう思ったことはなかったけれど、可憐、という言葉が合うような気がした。少し開けたところにあるお土産屋さんで「東方美人茶」という茶葉を買った。台湾の東側は中央山脈が南北を貫いており、太平洋から迫る台風もこの山脈にしずめられて低気圧として流れるそう。そんな標高の高いところで作るのが、お茶とわさび。このわさびはツーンとせず、お刺身にはたっぷりつけて食べるみたい。日照時間が短く、成長がゆっくりだからこそ、お茶もわさびも栄養や甘みが丁寧に凝縮されるのかな。
ちなみに「東方美人茶」という名前はイギリスの女王がつけてくださった名前らしい。「あめおちゃ」でもそうだったが、台湾の茶葉は、葉が丸められて直径5〜8mmほどの粒になっていて、急須の中でお湯を注ぐと葉が開いてものすごい量に膨らんだ。ガラスのポットに1、2粒の茶葉を入れ、お湯を注ぐと、葉が開いてくるくると回る。茶葉が重いから浮かんでこない。その茶葉の舞の美しさを見て、そう名付けたそうだ。台湾のお茶の栽培方法は厳格な法律で守られており、「東方美人茶」は特に、栽培開始から農薬は一切使ってはいけない。農薬を使うと、香りがこうはならないんだ、と、試食のお茶を飲みながら台湾人のガイドさんが言っていた。
日本では嗜好品だけど、台湾の人々はお茶を欠かせないものとしてとても大切にしている。お茶の飲み方が、カップに注がれたものが運ばれてくるのではなく、ポットとお猪口のような小さいカップが運ばれてきて、自分でお茶を入れて楽しむ、というスタイルなのが新鮮だった。台北市自由散策の日に訪れた「南街得意」というお茶屋さんでは、様々な茶葉が入った14個の小瓶がテーブルに置かれ、ここから好きな物を1つ選んでと言われた。選んでみたのは、「蜜香紅茶」。店を出る前、「ウンカと呼ばれる昆虫が茶葉を噛んだことにより、蜜のような香りがあります」という説明書きを読み、面白いなあと思った。
(う)