スー、高校生になる(3)

  
2024年8月あわらカップにて

 中学2年生の前半は、必死に国内の高校を調べて訪問して考察する日々。合わせて、NBHSの校長先生に問われた「カヌーポロの他には、何を学びたい?」という自分への課題と向き合いながらの試行錯誤。食卓でも何度も話題に上がりながら、正解の見えない模索が続いた。(ゆ)がよく言うように、きっと「どれも正解」。より多い選択肢があるということを豊かなこと、だと捉えたい。そこから迷って悩んで考え抜いて選択すること、それに意味がある。だからこそ、きっと辛いときも踏ん張れる。
以下は、高校見学の一年間を経て、(す)がまとめたレポートです。長文ですが、悩める少年の頭の中を垣間見ることができます。

2024年6月日本丸カップみなとみらいにて

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高校見学レポート
上原朱座
 
1,この一年の振り返り
 中学2年のこの一年、日本各地の大会に遠征で行くたびに進路のことを考えてきた。同世代の選手、日本代表含むシニア世代の選手、各地のクラブチーム監督や指導者とも積極的に会話をして、プレーに関することだけでなく、進路についてもアドバイスや意見をもらってきた。
 プレーについては、9月にあった日本選手権(中学生の部)での2連覇優勝を目標に据えて、一生懸命に取り組んできた。同世代の中では小柄な自分だが、試合では逆にそれを強みに出来るよう、戦略やポジショニングの研究にも力を入れた。山梨ではチーム練習ができる機会がほとんどないが、徹底した個人練習の見直しを図って取り組んだことで、大きく成長できた実感がある。例えば、各地の大会でシニアの部(主にカヌーポロに専門的に取り組んでいる大人世代のチームが参戦する最上位クラス。ほかに、カヌーポロ経験者や若い世代がチームを結成して参戦するミドルクラスと、小中学生やカヌーポロ初心者が参戦するビギナーズクラスの3部構成で大会が開催されることが多い)に出場するチームに加って競技させてもらい、その後もチーム加入に誘われるようになった。
 またU-21日本代表の練習に特例(U-21選考会は15際以上が対象で、今シーズンまではまだ受験資格がない)で参加が認められたこともあった。その結果、この一年で真剣に話ができるカヌーポロの仲間・先輩が各地にできた。またそのおかげで、自主練だけでは賄えない、チーム練習による連携プレーや展開を先読み能力、パス技術といった、試合形式の練習もしくは実戦でしか身に着けられない、新たな課題も認識できたと思っている。
 
2.高校めぐり(早川中学校卒業後の進路検討)
 日本国内でカヌーポロが競技としてできる(クラブチームが拠点にして週末などに活動している)場所は、全国に4か所(福井、東京、愛知、山梨)。中学3年になってから進路を検討しても間に合わないと考え、この4か所にNZも加えて、カヌーポロ続けていくこととと、高校生活の両方の観点をセットにして、夏から秋までを中心にこの一年間、ずっと検討してきた。以下の4点をポイントとして捉え、考察してみた。

      カヌーポロが練習できる環境・時間数(カヌーポロと向き合う「量」の観点)
      同世代。シニア選手のレベル(同じく「質」の観点)
      高校生活へのモチベーション(勉強内容、カリキュラムなど。自分にとってはカヌーポロが優先順位第一だが、カヌーポロを真剣にやってく上で欠かせない大切な観点だと考えた)
      高校後の進路(進学もしくは就業)との関連
 
(1)   福井県立金津高等学校(令和6822日見学)
  • 日本で唯一、カヌーポロ部があり、部活として平日週末練習ができる。同世代と一緒に練習できるのは最高。
  • 部員のレベルはそれぞれ。
  •  一人暮らしをする必要があり、現況では現実的ではない。
  • 公立高校であるが、福井県内ではいわゆる進学校としての顔があり、国公立大学進学を後押しする雰囲気。卒業後は進学して教員免許をとるか。
将来の進路の一つに考えている教員ということを考えれば、良い選択になるかもしれないと思った。しかし、平日、休日ともにカヌーができる環境に最初は憧れを持っていたが、当初より自分の実力も大幅に上がり、高校の部活レベルでは満足できないかもしれないと感じた。

(2)   ネーピア・ボーイズ・ハイスクール(NBHS)(令和6年1020日〜29日までのNZ滞在中に見学)
  • 部活としてカヌーポロ部があり、平日は部活練習。地域のクラブチームにも参加すれば平日・週末に練習が可能で、学校としても両立に理解がある。NZ国内の強豪校である上に熱心な選手も多く、同世代と平日週末できる最高の環境。
  • 同世代からシニアまで、人数・レベル共に高い、多数の選手・チームがある。
  • 授業選択は柔軟で関心の持てる科目も多い(木工、金属加工など)。
  • ホームステイもしくは入寮の選択があるが、生活のみならず学業でも全てが英語であるという挑戦。
  • 費用がかかる。
  • 高校卒業後は日本の大学に進学して教員免許をとるか、お金をためて(16歳以上からアルバイトが可能)NZの専門学校で野外活動インストラクターとなる(カヤック、ラフティングなどの経験も活かせる)。
NBHSに行くことへの大きな壁は二つあると思う。一つは英語圏での生活で、英語の会話力が十分でない場合に、とても辛い思いをして過ごすことになるかもしれない。また、この高校に進学(留学)するにあたり、多大な費用が掛かってしまう。しかし、僕はこの大きな二つの壁があってもチャレンジさせてもらえるなら、する価値は大きいと思った。
 
(3)   通信制の高校に入学して、練馬のゆうき実家に居候し、平日は自主練、週末は東京(葛西)のクラブチームに参加
  • シニアチームに日本代表選手がたくさん所属している(2024年世界選手権で得点王となった選手も所属している)ほか、外国人選手も所属している。
  • シニアチームに加わるのは、基本的に大学生以上とされており、葛西のクラブには同世代が極少。
  • 自己管理はできると思うのが、できれば通信制ではなく、同世代と高校生活を送りたい。
  • 現時点で、卒業後の進路はイメージできない。
この葛西カヌークラブのトップチームは日本選手権(日本一を決める大会)を9連覇しており、日本最強チームの一つである。主要選手のほとんどが日本代表で、こうした選手たちに手ほどきを受けることもできる。しかし、このチームには同世代のプレーヤーがほぼいない。これは同世代選手たちの意志というより、日本国内でカヌーポロを続けることの難しさが反映されている状況だと思う。トップチームに上がるには大学生以上が必要条件であるため、高校三年間はまた、自主練になってしまうと感じた。
 
(4)   豊田工業高等専門学校(令和61117日、学校見学会に参加)
  • 学寮があり、生活リズムが崩れることはなさそう。
  • 高専から通えるみよし市のクラブチームには、シニアチームに日本代表選手がたくさん所属している。
  •  国立高専の中では偏差値も高く、卒業後の就職は安定しているようだが、専門学科(土木、建築、情報系のエンジニア)の授業内容に今の段階であまり関心が持てない。
このクラブチームのトップチームは全員が日本代表であり、葛西のチームとともに日本最強のチームの一つである。また、その地域では同年代のプレーヤーも多くいて、常に上を目指せる環境に強く憧れた。しかし学業の分野であまり興味がもてない点や、NBHSと比べると、練習が週末に限られてしまう点、同世代プレーヤーの量と質の面では、とても敵わないと感じた。
   
(5)   豊田工業学園(令和611月に山梨で開催された大会にて、出場していた日本代表の選手より入手した新情報。この日本代表の選手は豊田工業学園の卒業生。学校見学はできていないが、ウェブサイトなどからさらなる情報収集のうえ検討。)
  • この学園を卒業するとトヨタ自動車への就職(生産ライン職が主)が約束されている。日本代表レベルになれば、会社もプレー継続に協力的でサポートもある。
  • 学園在学中に生徒手当が出るため、学費・寮費の費用負担なし。
  • 所属必須の部活にカヌーポロがないので、高校三年間は割り切ってカヌーポロから離れ、別のスポーツで心身鍛えることになる(学園の情報を教えてくれた日本代表選手は、高校三年間はラグビー部に所属していた)。
  • 学園説明にある「全体行動・規律重視」のような雰囲気が自分に合うか不安。約束されているトヨタ自動車の仕事に興味が持てるかどうかも分からない。
  • 日本代表に選出されなかったらカヌーに注力できなくなるかもしれない。
  • 学園後の就職先が確定。
この学校では将来、トヨタに入社することが約束されており、日本代表の間は会社も協力的でサポートも手厚いようだ。また在学中は生徒手当も出る。しかし、在学中はカヌーがほとんどできなくなるし、入社後の仕事内容にもあまり興味が持てなかった。さらに、代表メンバーから外れた(漏れた)場合や、会社の運営方針が変わってトヨタ内でカヌーがしにくくなる可能性も否めず、最良の選択とはならないと感じた。
 
(6)   奈良田の自宅を拠点に通信制の高校に入学
  • 同世代、シニア選手共にいない。
  • 自己管理はできると思うのが、できれば通信制ではなく、同世代と高校生活を送りたいところ。しかし、通学圏内の山梨県内には、進学したいと思える高校が特に見つからない。
この進路だったら、練習時間を増やすことはできる。しかし今までと同じ自主練がメインになり、カヌーポロが盛んでない山梨には同世代カヌーポロプレーヤーも、目標にし得る先輩も多くないため、成長には適さないと感じた。
 
 
3.まとめ(高校めぐりを経て考えること)
 まず、一年間、僕がやってきた活動は間違っていなかったと思えた。自分の名前、プレースタイル、カヌーポロへの思いや考えに至るまで、カヌーポロ業界のあいだで少なからず覚えて(知って)もらうことができた。昨年から今年の春頃までの大会時と比べると、出場するチーム探しは俄然に楽になった。豊田高専見学に合わせて申し入れた、みよし市での練習にも受け入れてもらうことができた。この業界の人たちはみんな協力的だが、この一年間に深まったつながりによって、様々な体験をすることもできた。そのおかげで、自分の中での、早川中学卒業後の進路希望について、明確にすることができた。
 具体的に検討をした上記の六つの中で、(2)ネーピア・ボーイズ・ハイスクール(NBHS)、(4)豊田高専、(5)豊田工業学園、の三つの選択肢のあいだで悩んだ。最終的に、僕はNBHSに進学してカヌーポロを磨きたいと考えた。なぜなら、高校生活の観点でも一番モチベ―ジョンが高く、また、カヌーとカヌー文化を学ぶのに最適と思ったからだ。僕は英語を学ぶのが好きだ。さらに、培った英語を用いて人と話すのも楽しいと感じるようになってきた。NBHSでは部活としての環境も充実していて、質・量ともに良い環境で練習ができる点に強く惹かれた。
 一方、豊田工業学園では、高校ではカヌーができない環境ではあるものの、高校卒業後に安定した職(トヨタに技術者として入社)につける点や、カヌーポロ選手として競技を続けられる環境は、多くの国内選手の悩みどころとなっていることもあり、魅力的なのだと思う。しかし、何年も先のことなので、正直イメージしにくい上に、職の内容について、現時点で興味が持てない点、日本代表選出がカヌーポロを続ける条件となるのではないかなど、心配な点も多くあった。
 豊田工業学園について、寮・環境・資金支援・週末のカヌー場との連携可能など、これまで把握できていなかった選択肢がまだ、存在していたことに、しかもNZからの帰国直後のタイミングで出会えたことに正直、衝撃を覚えた。おそらくNZを検討もしないままこの選択肢を知ったなら、飛びついていたかも知れない。豊田高専も同様だった。しかしNZ視察後にこの両校を知ったがゆえに、僕はかえってNBHSに行きたいと思った。なぜなら、カヌーを文化としても学びたいという思いが強くなったからだ。愛知県にも日本でトップを争うクラブチームがあり、日本代表が多く所属している。愛知県に進学しても自分のカヌーポロを高めることは十分にできると思う。しかし、NBHSには、日本にはない、NZのカヌーに対する愛とカヌーを培ってきた文化がある。カヌーポロはその一部分である。また、僕は将来、カヌーを生活の一部のように暮らしていきたい。そのためにも、日本にはない、カヌーが文化になっているNZを浸るように感じることを熱望するようになってしまった。
 NZの人々のカヌーとのかかわり方が、とても心に残った。現地の人は、親子でカヌーポロをやっている家庭もあって、家族間でも競技を盛り立てている。こうしたカヌーができる環境に強く憧れた。部活としても定着しており、レクリエーションを目的にやっている人と、NZ代表を目指しているようなアスリートもいた。目的が違う人がチームに共存して、互いを仲間として認識し合い、自分たちの目標を自ら決めて、共に目指す現地の人柄も興味深かった。また、他者を尊重するプレーが今の自分に圧倒的に足りないものでもあり、学ばなければとも強く感じた。
 学校という面でも、NBHSにはワクワクした。授業は教科選択制の部分大きく、自分がやりたい教科を自分で選択する自由さにまず惹かれた。また体育の授業や、水の上で見られた生徒たちの力強さの中で揉まれていくと、自分はどう成長できるんだろうとイメージが膨らんだ。生徒たちの練習メニューは決まっていないようでそれも楽しく感じられた。自分に必要な練習を自分で決めているようだが、そこにもそれぞれ芯が感じられた。早川町で思い描いていた高校の姿とは大分違っていて、これが自分には心地よいあり方だと思った。そんな生徒たちを見守る先生の姿には、自分が不登校になった時のことも重ねて感慨深いものがあった。先生という立場でも生徒たちとより仲良くかかわりあえるのだと、とても感動した。
 学校生活の中で求められる会話能力も高い。生徒はいつでも声をかけ合う雰囲気があり、僕にもよく話しかけてくれた。そんな彼らとも仲の良い友だちになること、コーチの指示を完璧に聞けるようになること、そして授業についていけるために語学の勉強と、話し方の勉強をもっとしたいと思った。春から取り組んでいる「中学の英語担任教員と母との会話は全て英語」課題は継続しつつ、向こうの英語の授業のレベルについていけるよう、文法の基礎や単語をきちんと身に着ける。また読書の時間はすべて英語の本を読むことや、毎日日記を英語で書いて英語の先生にチェックしてもらうなど、優先順位の一番上に来るようにしていく。また、カヌーのコーチが貸してくれたカヌーポロの戦術の本を何回も読みなおし、英語でのカヌー用語も身に着けたい。
 NBHSの後に目指すものとして、僕は、カヌーポロと生涯に渡って向き合っていきたい。また、その中で自分の実力を究め日本代表にも挑戦したいと思っている。大人になった時、自分の実力と可能性を見極めるためにNZを含め、カヌーポロ先進国に挑戦するとことにも憧れている。また、僕は教師になることにも憧れを持っている。NZでは、勉強も意欲的に取り組み、NZの先生のあの何とも言えない自由で優しさのある雰囲気についても学びたいと思っている。
上記の項でそれぞれ検討したように、国内で進学してカヌーポロを磨くことは現実的に可能だと思うが、「あの時NZに行っていけば...」と何度も思い返し、自分にも言い訳を作ってしまいかねないと思う。僕は早川中学校卒業の進路として、NBHS進学を第一希望としたい。

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2024年9月日本選手権にて

(わ)